中央教育審議会大学分科会(第181回)・高等教育の在り方に関する特別部会(第15回)合同会議 議事録が公表されていましたので、Perplexityにまとめさせました。

出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/053/gijiroku/1422632_00016.html

中央教育審議会大学分科会(第181回)・高等教育の在り方に関する特別部会(第15回)合同会議 議事録の要約等

この議事録は、2025年3月に開催された第181回大学分科会と第15回高等教育の在り方に関する特別部会の合同会議の記録です。会議は永田分科会長の進行のもと、ハイブリッド形式で行われ、冒頭の「認証評価機関の認証について」は非公開とされ、その後はYouTubeで公開されました。主な議題は以下の通りです:

  1. 認証評価機関の認証について(非公開部分)
    • 一般社団法人専門職高等教育質保証機構からの申請に関する審査委員会の審議経過が前田臨時委員より報告され、原案通り答申することが可決された
  2. 日本の学位・称号等枠組み(案)について
    • 国際的な教育資格の相互承認のための枠組み(日本版NQF)が提案され、学位授与機構名で公表される予定
  3. 専修学校の適格専攻科の大学院入学資格の付与について
    • 専修学校の専攻科修了者への大学院入学資格付与の制度設計案が提示
  4. 少子化を見据えた高等教育の在り方に関する答申案について
    • タイトルを「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」に変更
    • 最終的な答申案の内容確認と修正点の議論
  5. 初等中等教育における教育課程の基準等の在り方に関する諮問報告
    • 学習指導要領改訂に向けた審議事項の説明
  6. 令和7年度予算案の説明
    • 高等教育関連予算の概要説明と新組織「地域大学振興室」の設置計画

主な発言者と発言内容の詳細

永田分科会長
会議全体の進行を担当し、各議題の導入と総括を行いました。答申案のタイトル変更について「少子化答申ではなく、知の総和答申と呼ばれることを期待する」と述べました。最終的な調整を一任されることとなり、閉会時には大学分科会が元々「大学審議会」という独立した審議会であったことに言及し、「昔から大学は議論の対象で、議論の対象はこの国をつくっていく基盤である」と述べ、第12期大学分科会の歴史的意義を強調しました。

佐藤参事官(高等教育局国際担当)
国際的動向に対応するための日本版NQF(National Qualifications Framework)の必要性について詳細な説明を行いました。世界の留学生数が過去20年間で4倍に増加している背景や、ユネスコの高等教育資格承認に関する世界規約(東京規約)について説明し、「各国の制度が違うので、他国からの照会に窓口となって対応する国内情報センターの設立が締約国には求められている」と述べました。日本でも高等教育資格承認情報センターが大学改革支援学位授与機構(NIAD)内に設置されていることを紹介しました。

石橋大学教育・入試課長
学位・称号等枠組みの表について、「1から8のレベルの中で、5と6だけ2つのカテゴリーに分かれており、左側は学位、右側が称号となっている」と説明しました。英語版・日本語版を学位授与機構名で公表する予定であり、「文部科学省としても問題ない」として各関係機関に通知する意向を示しました。

志賀委員
学位枠組みについて3つの重要な指摘を行いました。第一に、「本来、大学分科会の議論ではなく、生涯学習分科会管轄ではないか」と指摘し、「部会なり有識者会議なりで議論すべき」と主張しました。第二に、表を定期的に見直す会議体の必要性を強調し、「専修学校の専攻課程の取扱いや短期大学協会からの要望など、新たな教育課程が提案される可能性がある」と述べました。第三に、「各レベルのラーニングアウトカムを明記すべき」と主張し、「欧米では2000年代にEQF(European Qualifications Framework)が創設され、各レベルで身につけるべき能力が明記されている」と国際的な動向を紹介しました。これに対し、教育入試課長は「アップデートするものも必要になってくる」と応じました。

麻生委員
認証評価の重要性を指摘し、「教育の質保証という観点から、外国からこれをどう見るかは外国の自由だが、日本で制度化されている認証評価が重要」と述べました。表の注釈に認証評価の受審義務が記載されていることを評価しつつ、「適格・不適格、適合・不適合があることまで書いてほしい」と要望し、「質保証がされている学校かそうでないか、義務化されている学校かないかをもっと分かりやすく発信すべき」と主張しました。専攻科修了者への高度専門士称号付与については、生涯学習推進課長から「付与する方向で検討している」との回答がありました。

小林(弘)委員
答申案について「規模適正化の議論の場がどこなのか不明確」と指摘し、「地域構想推進プラットフォームでもなさそうだし、地域研究教育連携推進機構でもなさそう」と述べました。また、公立大学についての記述が国立・私立に比べて規模適正化のトーンが弱いことを指摘し、「公立大学は民業圧迫みたいな感じで捉えられており、看護師養成機関など公立がどんどん作られ、学費の高い私立大学は定員割れしている現状がある」と私立大学の立場から意見を述べました。さらに、「公財政支出の規模について何回も要望しているが具体的なことが書かれていない」と指摘し、財政面での明確な方針を求めました。

吉見委員
答申案のタイトルが「知の総和」に変更されたことを受け、「知の総和と質・規模・アクセスの関係性についての説明が重要」と指摘しました。「規模の適正化はせざるを得ないと考えているのはほとんどの方だと思うが、それに対して知の総和を落とさない、むしろ上げるのだと掲げているところにポイントがある」と述べ、知の総和を数×能力と捉えるなら「質を上げるしかない」という論理展開を明確にするよう求めました。また、アクセスの確保を「下から支えるセーフティーネット」と位置づけ、これらの概念が「数式のように組み合わさっている」ことをメディアにも分かりやすく説明すべきだと提言しました。

髙見高等教育政策室長
答申案の修正点について詳細に説明し、タイトルを「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」に変更した旨を報告しました。また、パブリックコメントで158件の意見が寄せられたことや、「はじめに」の部分で危機を少子化に絞らず様々な危機があることを明確化したこと、地域のアクセス確保のための協議体の名称を「地域研究教育推進プラットフォーム」から「地域構想推進プラットフォーム」に変更したことなどを説明しました。答申実施のための政策パッケージについて、「すぐにできるもの、比較的時間をかけて行わなければいけないものといろいろあるが、工程表の形で整理した政策パッケージを答申が出た暁には政府のほうでしっかりと用意して、それに沿って必要な施策を進めてまいりたい」と述べました。

主な争点

1. 日本の学位・称号等枠組み(NQF)の在り方

背景と現状
世界的に各国の教育資格を相互に承認するための枠組み(NQF)が整備されている中、日本とアメリカが主要国で唯一未整備の状況でした。これにより、日本の高専などの卒業生が海外留学する際に「資格が何か分からないので入学させない」といった不利益が生じているため、日本版NQFの整備が必要とされています。

主な議論点

  • ラーニングアウトカムの明記:志賀委員は「各レベルで身につけるべき能力の記載がない」と指摘し、欧米の枠組みではこれが標準だと主張。石橋課長は「海外からの問合せに応じてアップデートしていく」と回答。
  • 見直し体制の整備:枠組みを定期的に見直す会議体の必要性について、志賀委員が「今後の制度改革に対応するため必要」と主張。石橋課長は「中央教育審議会で御議論いただくのが大事」と回答。
  • 質保証の方法:麻生委員は認証評価の重要性を強調し、「教育の質保証の観点から、認証評価の受審義務だけでなく適格・不適格の判定があることまで明記すべき」と提言。

2. 専修学校の適格専攻科の大学院入学資格付与

背景と制度設計
令和6年6月の学校教育法改正により、専修学校に専攻科を置くことが可能になりました。修業年限2年の専門課程を卒業し、さらに2年の専攻科を修了した場合(計4年)に大学院入学資格を付与することが検討されています。これは平成17年に4年制専門課程に対して認められた大学院入学資格との整合性を図るものです。

主な議論点

  • 質保証の方法:中安生涯学習推進課長は質保証の取組として、①文部科学省による事前認定、②外部の識見を有する者による5年に1回の評価義務、③専門分野の質保証の三点を挙げました。
  • 評価の独立性:麻生委員は「独立した第三者による評価のための体制」について質問。中安課長は「専修学校には認証評価機関を認証する仕組みがないが、できる限り独立性の高い評価機関において評価を行うよう促す」と回答。
  • 高度専門士称号の付与:2年制専門課程+2年制専攻科修了者への高度専門士称号付与について麻生委員が質問し、中安課長は「付与する方向で検討している」と回答。

3. 高等教育の在り方に関する答申案

背景と主要修正点
当初は「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」というタイトルだったが、永田分科会長との相談の上、「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」に変更されました。これは「少子化答申」ではなく「知の総和答申」と呼ばれることを期待してのことです。パブリックコメントでは158件の意見が寄せられ、それを踏まえて修正が加えられました。

主な議論点

  • 公財政支出のGDP比指標:小林委員や村田委員らが「公財政支出の具体的記述が少ない」と指摘。村田委員は「国民1人当たりのGDPに対する在学者1人当たりの公財政支出は進学率に影響を受ける」と指摘し、「財務省は支出抑制のためにこの指標を使う」と懸念。
  • 国立・公立・私立大学の役割分担:小林委員は「公立大学の規模適正化についての記述が国立・私立に比べて弱い」と指摘。石橋課長は「自治体ごとにきちんと議論をしていただくことは大変重要」と回答。大森委員は「設置者を超えてみんなでタッグを組まなければならない」と強調。
  • 地域における高等教育機関の連携体制:松下委員は「地域研究教育連携推進機構」の範囲について質問。永田分科会長は「機能的に協業できるところは行ったらよい」と回答し、「地方はジオグラフィックな地方であり、地域は多様な機能で連携を組む」と説明。

その他特記事項

1. 答申のタイトル変更と「知の総和」の概念

「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」から「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」へとタイトルが変更されました。永田分科会長は「少子化答申ではなく知の総和答申と呼ばれることを期待する」と述べました。吉見委員は「知の総和と質・規模・アクセスの関係性」を数式的に捉え、「規模の適正化は避けられないが、質を向上させることで知の総和を維持・向上させる」という論理を明確に説明することの重要性を指摘しました。この答申は少子化への対応だけでなく、日本の高等教育全体の再構築を目指すものとして位置づけられています。

2. 新組織「地域大学振興室」の設置

令和7年4月から文部科学省高等教育局内に「地域大学振興室」が設置される予定です。この組織は地域大学振興に関する高等教育機関への情報提供を一元的に担い、「地域のアクセス確保や地方創生の取組を推進する」役割を持ちます。答申案の43ページには「国における司令塔機能を果たすための責任ある体制整備」として言及されており、地域における高等教育の連携体制構築の中核を担う組織として期待されています。石橋課長は「自治体との議論をもう一歩踏み込んでやっていきたい」と述べており、地域連携を推進する司令塔としての機能が期待されています。

3. 第12期大学分科会の歴史的位置づけ

本会議は第12期大学分科会および高等教育の在り方に関する特別部会の最終回でした。永田分科会長は閉会の挨拶で、大学分科会が元々「大学審議会」という独立した審議会であったことを指摘し、「そういうレガシーを持って、我が国の高等教育についてのものすごく上からものすごく下まで話し合ってきた格調ある審議会」であると述べました。伊藤高等教育局長は、第12期中は「コロナ禍を契機とした世界の急激な変化など、高等教育を取り巻く環境が大きく変動する中で、その変化を適切に捉えながら活発に御審議をいただいた」と評価し、大学分科会が9回、特別部会が15回にわたって審議を行ったことを報告しました。

4. 教職員の処遇や大学間の連携

平子委員はパブコメに「大学教職員の雇用や待遇に関する課題が射程に入っていない」という指摘があったことを重視し、「これから先、少子化の影響で業種を超えて良い人材の取り合いになってくる可能性がある」と述べました。答申案では57ページに「質の高い教育研究を行っていくためには、優れた教職員や学生を引きつける環境を構築することが必要」と記載されていますが、具体的な処遇改善策については明示されていません。また、大森委員は「設置者を超えてみんなでタッグを組まなければならない」と強調し、永田分科会長も「設置者を問わず」という意味で高等教育機関を捉える重要性を指摘しました。

5. 令和7年度予算案の特徴

運営費交付金・私学助成については前年度同額程度を確保しつつ、新たな政策として以下が盛り込まれています:

  • 多子世帯学生等の授業料・入学金の所得制限なしの無償化
  • 大学院修士課程の授業料後払い制度の本格実施
  • 海外留学支援制度の奨学金単価拡充(対前年度7億円増の96億円)
  • インド・アフリカなどグローバル・サウスとの学生交流推進(対前年度2億円増の10億円)
  • 世界トップレベル大学院教育を行う拠点形成支援(19億円)
  • 半導体分野の連携型教育プログラム構築支援(6億円)

予算面では「改革は必ずコストがかかる」(益戸委員)との指摘があり、髙宮委員も「経済的なところの部分で公的資金の支出については、もう少しアピールできるような内容を盛り込めたらよかった」と述べるなど、十分な予算確保の重要性が強調されました。

個人的に気になったところ

教育資格の相互認証の枠組みが提案されたということや各レベルのラーニングアウトカムを明記するという点が気になりました。現在の表には細かく書いていないので、知の総和答申の認証評価制度の大幅な改定とも連動してくる気がしました。また、地域のアクセス改善というところで、地域大学振興室が新たに設置されるとのこと、なかなか解決は難しい問題ですが、つぶれそうな私立大学を救済するため、ただ単に公立化を推進するような組織にはなってほしくないなと感じました。

https://gendai.media/articles/-/147952  こんな記事もありました。

(出典:現代ビジネス 多額の税金で「不人気なFラン大学」を救済…私立大学の「公立化」は正しいのか?)