1.18歳人口減少の影響


 18歳人口の減少に伴い、大学進学者数も減少すると予測される。進学者数は、以下が現時点の最新の推計値と思われる。

中央教育審議会大学分科会(第174回)会議資料
【資料5-1】大学入学者数等の将来推計について (PDF:8.2MB) PDF
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/000248025.pdf

推計によれば、外国人留学生比率が現状のまま(3.07%)であった場合は、令和4年度の大学の入学定員の総和である62万人と2050年の予測値50万人では80%程度となり、20パーセントの余剰が出る。また、最も楽観的な外国人留学生比率がG7平均(8.08%)の場合でも、15パーセント程度の余剰が出る。

2023/10/17 大学「全入時代」 地方、小規模大の定員割れ深刻化 再編圧力も
https://mainichi.jp/articles/20231017/k00/00m/040/230000c

上記の記事によると、この30年あまりで私大の数は1・7倍の約620校まで膨らみ、すでに大学全入(志願者すべてが大学を選ばらなければどこかには入れるということをさす)に突入しています。一方で、私大の53・3%が入学者の定員割れを起こしている。

旺文社 教育情報センター 22 年 11 月
私立大「定員超過」による補助金“不交付”、23 年度から「経過措置」廃し、“本来”基準で強化!
https://eic.obunsha.co.jp/resource/topics/1011/1101.pdf

急速な少子化で志願者は減っている。すでに、定員割れの大学が半分も発生している背景には、定員超過に対する補助金交付算定基準が関わっている。必ずしも定員=入学者ではないため、人気上位の大学が定員を超えて取っている場合、下位の大学は割を食う構造となっている。なので、文部科学省は補助金の配分に当たり、収容定員を超えて学生をとっている大学には補助金の配分を減額するないしは不交付としている。

2023年度から私学助成不交付基準は収容定員超過率に一本化
https://between.shinken-ad.co.jp/detail/2022/12/teiinkanri.htm

SMBC日興証券 こうえき 第15号
https://www.smbcnikko.co.jp/corporate/public/magazine/pdf/211201_01.pdf

私立大学等経常費補助金が財務に占める割合は、概ね15パーセント程度となっており、不交付となる場合、財務的に相当厳しい状況になる。また、認証評価でも是正勧告等厳しい指摘を受けることになることから基本的には守らざるを得ない。2025年度までには、収容定員4000人未満の大学で2023年度1.5倍→2025年度1.3倍に、収容定員4000人以上8000人未満の大学は2023年度1.4倍→2025年度1.2倍に、収容定員8000人以上の大学は2023年度1.3倍→2025年度1.1倍となり、厳しい基準が適用されるため、文部科学省としては、こうした制限を一つの政策として、この状況を是正しようとしている。

【大学受験2024】私立大入学定員、立教など13大学で定員増減
https://reseed.resemom.jp/article/2023/06/29/6689.html

東京23区の大学における定員抑制について
https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/collaboration/daigaku

一方で、不交付基準厳格化の影響もあり、学生を集める力のある大学は定員増をすすめている。ただし、東京都では2028年まで定員抑制策が続くため、東京以外のキャンパスの増員となっている。(一部例外あり)

私大再編へ撤退後押し 文科省、自主的縮小で補助金増
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE1912S0Z10C23A9000000/

2.18歳人口減少に対する対策

 様々な施策はあるものの、2050年には現行の定員を大幅に下回る18歳しか存在しないため、現状のままではじり貧間違いなしである。そこで、文部科学省は、体力のないところは、大学間連携・統合を活用し、経営基盤を強化、必要に応じて経営指導、また、立ち行かなくなった時の学生に対するセーフティネットも確保しつつ、社会人、留学生の増加など需要の喚起を行うとともに、日本企業が意欲を失っている教育訓練機能を大学が担い、即戦力を育てていくというような方向性を打ち出している。

企業が支出する教育訓練費の推移
https://honkawa2.sakura.ne.jp/3357.html

文部科学省における今後の具体的施策(4ページ~)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/innov/dai3/siryou1.pdf

・大学間の連携・統合
・学部単位での事業譲渡の円滑化
・経営指導の強化

内閣府 地域における大学等の連携・統合の促進に向けた方策
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg7/20210420/shiryou2_3.pdf

「事後型の規制・制度」による学校法人・学校の連携・再編及び撤退の促進に係る文部科学省の取組について
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2210_02human/221130/human05_0101.pdf

・円滑な撤退の手続きを明確化
私大の経営破綻に備え学生の修学継続へルール作りに着手…少子化で284校が定員割れ
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230524-OYT1T50205/

・社会人学生(リカレント教育)の誘導
成⾧分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業
https://www.mext.go.jp/content/20221205-mxt_syogai03-000026204_1.pdf

・外国人学生の増加
未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouikumirai/pdf/230427panflet.pdf

・(地方)関東圏よりも18歳人口減少が顕著な地方における議論の前提として客観的なデータを提供。そのデータをもとに国公私立大学が今後を考える機会の創出。
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/000259054.pdf

3.まとめ

18歳人口の減少は、大学にとって大きな課題となる。2050年には現行の大学定員を大幅に下回る18歳しか存在せず、大学進学者数の減少は避けられない。地方大学や小規模大学は特に影響を受けやすく、定員割れが深刻化し、経営悪化に繋がる可能性が高い。文部科学省は、大学間の連携・統合、学部単位での事業譲渡の円滑化、経営指導の強化など、様々な対策を講じている。また、社会人学生や外国人学生の増加、地方大学のデータに基づく議論促進など、多角的なアプローチで大学改革を推進している。しかし、大学側も積極的に改革に取り組む必要がある。単に定員削減や経営効率化に留まらず、高等教育の質向上や多様性確保に努め、変化する社会のニーズに対応できる大学へと生まれ変わることが求められる。最後にChatGPTの一言。「18歳人口減少は大学業界にとって危機であると同時に、改革のチャンスでもある。大学が生き残るためには、この危機を乗り越え、新たな時代に対応できる大学へと変革していく必要がある。」